「おら、コアントロー。」


「サンキュ。」

マスターに頼んでおいたコアントローを受け取る

一応、ワレモノだから、どうやってもって帰ろうかと少し悩む



マスターはきょろきょろ周りを2、3回確認する


「今日はいねぇのか? 相棒。」

相棒というコトバにピクッと眉を寄せる

どうせ蚕のことが言いたいんだろう


「・・・・・適切じゃねぇな、その表現。」


「あっそ。んで?お留守番か?」


「いや、どっかで暴れてんだろ。」

確か、昨日そう言っていた


だとしたら、このへんのエリアだろうと勝手に憶測



「そーか。でも今日はそろそろ帰らせた方が良いぜ。」


右手で煙草を吸ってから、勢いよく此方に向けて煙を吐き出す


煙が顔に被って、また自然と眉を寄せてしまう

このオッサンの煙草の匂いはあんまり好きじゃねぇのに...



「何で。」


「嫌な感じすんだよ。長年の"勘"だ。」


「へー。」


確かにこの人の言うことはよくあたるが、正直アイツのことはどうでもいい



「オイオイ、年寄りの言う事は聞くもんだぜ。」


「・・・・・電話だけしといてやるよ。」


「ハハ、そうしてやれ。」











//SLAUGHER★MENS//10,初対面








店を出て、バイクを止めたところまで歩く

店の周りに置くと、ふざけた野郎に何されるかわかったもんじゃない

かといって、今日は止めるところが遠すぎたと後悔


それから、




「ぐぁ・・・・・・うぅぁ・・・」

面倒くさいものに遭遇してしまったのも後悔










「弾3発くらってまだ生きてんのか、アンタ。」


「がはッ・・・うぁぁ・・」


「・・・・・良いね、そういうの嫌いじゃないぜ。」










歩いていたら、突然ナイフを持って突進してきた

もちろん、俺は刺される前に銃を撃った

まっすぐ真横から来たから、弾も綺麗にあたる

相手からの間隔は約5m

返り血を浴びることもない




倒れて苦しんでいる相手に少し近づく


久ぶりに人が苦しむところを見る

なかなか死んでくれないが、それはそれで楽しめるものだ






「うあああぁぁああッ・・・・・・」

大きな声をだして、力の入るはずのない腕をおもいきり振り上げてきた


「・・・・っ?!」


振り上げた手で掴んだのは俺の足


とっさの事で体勢が崩れた

その反動で手に持っていた袋

つまり、コアントローを落としてしまった


ガシャンッと盛大に音を鳴らす




「クソ、死に損ないが・・・」









パァンッ








あたりに銃声が鳴り響く









「最後の最後に余計なことすんじゃねぇよ・・・ったく。」


せっかく貰ったコアントローは足元でビンから流れ出た







流れ出た酒が撃った相手の血と混ざり合う


近くにある電灯の光が当たって、赤がよくみえる









死んでいく人間はあんなにも醜いのに




血の色だけは、とても綺麗な赤













ふと、蚕が血を極端に嫌がっている事を思い出した




" 汚い "



そう言って、いつにもなく顔を顰める








「人間なんて、生きてる限り汚れる一方だ。」








汚い




一言で表すのなら、それがいちばん適格なんだろう






「アイツの言ってることもハズレちゃいねぇけどな。」









そうだ、と思い出して


コアントローをもう一度貰いに店の方向へ戻る














ガタッ





「・・・・・・・?」



少し歩くと横の道から音がした


道と言うより、建物と建物の間なので道と言うほど広くない







そこを覗いてみると、人がいた





というより





「・・・・・・・・・・何やってんだ、オマエ。」




「・・・・・・・・」



蚕がいた










返事はない


壁に寄りかかるようにして、目を瞑っていた




誰かにやられたか?


コイツが?


まさか


それに外傷がない



血はそこら中についているが、返り血だろう


息もしてるし死んじゃいねぇ







だから








どうしろというんだ



自分がどうしようとしているのか

よくはわからないが、多分起そうとしてる



いつから、こんなにお節介になったんだ、俺は





蚕の前でしゃがみ込んで、とりあえず頬を抓る

蹴り飛ばそうとかも思ったが、いまやったら手加減できない



「・・・・・・・・・・起きねぇと撃つぞ。」


ボソっと脅しをかけてみる

いや、コレで起きるとはおもっていないが



「・・・・・・・・や・・だ。」


「・・・・・起きたのか。」



まさか返事をされるとは思ってなかったが、起きたなら問題ない





「ねぇ、頬の手をいい加減はらして・・・・けっこういひゃい。。」

頬を抓っているせいで、ところどころ呂律が回っていない


「おら。」


最後におもいきり引っ張って離してやる



「イッタ・・・・!もおー・・・」


「オマエ、何やってたんだ此処で。」


「あー・・・うんと、気ぃ失ってた・・・?」

頬をさすりながら、答える


疑問系を疑問系で返すんじゃねぇよ



「やられた・・・わけじゃねぇだろ」


「うん、違う。偏頭痛...みたいな。」


「いまは。」


「ちょっと嘔気と・・・めまい」


みたいなじゃねぇだろ、それじゃ

嘔気とめまいなんか、おもいきり偏頭痛の症状じゃねぇか







「・・・・・はぁ・・・」


ため息をもらす

なんでこんな状態のコイツをみつけてしまったんだろう


ホント、どうしろというんだ俺に



「そんな盛大にため息つかないでよ。」


「・・・・とっとと帰れ。」


「そうしたいとこだけど、フラフラしちゃってムリです。」


「なら担ぐ。」



あんまりやりたくなかったが、いい加減イライラしてきたので行動に移す

早くコアントローを受け取って帰りたい








「はっ?!え、ちょ・・・・・って、うおッ?!」

「暴れんじゃねーよ。落とすぞ。」

「ちょ、まっ!それはナシ!!」




肩に物を担ぐように蚕を置く




「うわー・・・・なに、俺って物レベル?せめておぶるとかさ・・・」

「バカいうな、男子高校生をおぶる趣味なんてねぇよ。」

「あぁ、まあソウネ。」


自分と蚕には身長差がある

つまり、体重もその分差があるはず


と思ったが




「オマエ・・・重っ」

「んな?!失礼な!!これでも標準体重っ!!」

「何キロ。」

「57キロ。」

「・・・・だいたい6キロ差か。」

「重くないっしょー?」


バカいうな。

小さいといっても、男子高校生

片方の肩に重さがくる訳だから、肩に負担がかかる



まぁ、ここら辺が人の少ないところだった事だけが救い












散々な想いをして、やっとのことで店につく





「こーんばーんわー。」


肩から下ろした蚕が扉をあけ、カウンターの方へ挨拶をする

















「オヤオヤー?キミら、もしかして高校生とちゃう?」











返ってきたのは聞き覚えのない声だけ







「アカンやん。こないな時間にこんな店きたら。はよ、帰り。」




黒いキャップに黒と迷彩の服

耳には大量のピアス


キャップから微かにみえるのは、照明にあたってキラキラ光る金色の髪










「・・・・・アンタ、誰?マスターどこ?」

相手が気に入らなかったのか、蚕が不機嫌そうに質問する



「マスターならでかけてんで。俺、店番やねん。・・・・って、んー?」


喋り終わったと思ったら、こちらに気付いたのか、じぃっと見てくる



「んだよ。」


「え?あー、スマンスマン!」

にこにこと笑って手を合わせて謝ってくる

普段の蚕の笑顔と似てる


気持ち悪・・・・・







「・・・・・帰るぞ、蚕。」


マスターがいないなら用はない

さっきから予定が狂いすぎだ





「おっと、ちょぉ待ち。」




「まだ、なんか用か。」


振り返って、おもいきり睨みつける













「兄ちゃんらが噂の殺戮少年やな。」















「・・・・・・誰だ、オマエ。」










「 " 冥城 雪 " いうねん。よろしゅうな。」


またにっこりと深い笑みを作った










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冥城 雪の読みは、みょうじょう すすぎ デス。


祝10話目☆in 悪戯でお送りしましたー

んでもってでましたよー新キャラー!

いやー、コレが楽しみでたまらなかった。



そして來羽がとてつもなくS・・・・

今回、いつも以上に楽しかったなぁー。笑









05/8/29

WrittenBy 悪戯