ヤな感じ。 最初の印象がソレだった。 //SLAUGHER★MENS//11,拒絶 「とりあえず水出して。」 傍にあった椅子に座りながら言った。 瞬間、來羽の視線が俺の身体に刺さるのを感じた。 ごめん。帰りたいのは俺もなんだけど、コレじゃぁバイク運転できそうにない。 血の臭いがこびりついた鼻で息を吸うごとに喉がヒリヒリして、 頭にのしかかる鈍い痛み。 あー…もう。 イライラして、隣りの椅子を蹴飛ばした。 「ちょぉー。乱暴なことせんといてやぁ!店番しとる俺のせいにされんのやから。」 コトンと、とても冷えていそうな水の入ったグラスを渡される。 俺は受け答えする気にはなれず、水を飲み始めた。 「店が水ぐらい出すの当たり前やけど、礼ぐらい言うて欲しかったわ。そう思わへん?」 「………コアントロー出せ。」 「……君も君で俺の言うことシカトすんのかい。しかもコアントロー?」 「マスターに頼んでた。出せ。」 「最低限のコトしか喋らんのね、君。まぁえぇわ。コアントローな。ちょぉ待っとき。」 それを言うと、冥城雪は店の奥に入っていった。 そして、それを見た來羽も俺の隣りにどかっと音を立てて座った。 じろりと横目で睨みつけられる。 「さっさと帰るんだからな。てめぇも早くそれだけ回復しろ。」 「ん。わかってる。」 來羽に心配されてるよね。俺。 うーわ。なんか、スゴくない? なんて思ってたら、冥城雪が帰って来た。 「あぃよっ、コアントローな。確かに渡したで。」 冥城雪が來羽にコアントローを渡す。 來羽は特に何も言うことなく、それを受け取っていた。 「それにしても、兄ちゃんたち、噂になっとるだけあるわぁ。そこら辺のカス共とは目が違うてるわ。」 そう言って、冥城雪は俺と來羽を見比べる。 視線がうざったい。 自分自身、どうしてこんなに冥城雪が気に入らないのかわからない。 來羽の時とは全く、正反対の感情。 來羽の存在は、すごく異様なオーラで俺を引き付けさせた。 けど、コイツは來羽と同じ異様なオーラを出しているのにも関わらず、 本当に、正反対なのだ。 拒絶。 心の底から、全身全霊でコイツを拒絶している感じ。 こんな感情を人に抱いたのは人生で二度目だと思う。 一度目は、父親に"憎しみ"という感情。 けど、それ以外に人をこんなにも拒絶したことがない。 そもそも、自分は普段から"愛想の良い篠崎蚕"という、仮面をかぶって生きて来ていて、 演技をするのは得意なハズなのだ。 例え嫌いな奴に話しかけられたりしても、それを隠して笑顔で接する。 それが今までの"篠崎蚕"だったのだ。 どうして、コイツに対しては仮面をかぶって、演技が出来ないんだろう。 感情が全てあらわになって、奴を拒絶する。 この頭痛のせい? 來羽に出会ってから、俺の中の何かが変わったのか? それとも、コイツ自身に何かあるのか? 全てが当てはまる気がするし、 全てが違う気がする。 …わからない。 「で、てめぇは何者なんだよ。」 來羽が、冥城來羽を見据えて言った。 「……まぁ、情報屋とでも言うておこうやないか。」 「情報屋?」 「あぁ。せやから、それを伝って殺戮少年の話をちょぉ、耳にしてな。気になっとったんや。」 「噂って、どんな。」 「まぁ、そりゃ色々とやな…。ただ、噂は星の数ほどあっても、名前までは中々ハッキリしないんや。 この世界は、名前がバレれば致命傷やからな。」 「へぇ。」 「……何や、それ以上は自分のことについて、もっと聞かんのかいな?」 冥城雪が、目をぱちくりとさせた。 「特別興味があるわけじゃない。」 「…変わった人間やね。」 「そりゃどうも。」 「ははっ。おもろぃわー。」 「なぁ」 「……あ?」 ふいに話しかけられて、間抜けな声が出た。 「君、髪の色綺麗やねー。モテるんとちゃう?」 元々答える気はなくて、黙る。 「君にはシカトされてばっかりやな。」 そういって、冥城雪が苦笑いをする。 それが 無性に気に喰わなかった。 「…來羽、もう平気だから、帰ろ。」 俺は立ち上がって、振り返ることなく入ってきたドアへと向かう。 乱暴に開けられたドアについていた鐘が、カランカランといつもより荒々しく鳴った。 「篠崎蚕クン、戸塚來羽クン、また来てな。」 足が、 ピタリと動かなくなった。 今までアイツは、俺と來羽のコトを名前で呼ぶことはなかった。 アイツ自身は自分のコトを名乗ったけれど、俺と來羽は名乗っていない。 それはもちろん、アイツが言っていたように、この世界で名前が漏れると色々と厄介なコトになるからだ。 俺らは今まで殺人をバレないように殺戮をやっていた。 それが噂になっていたというコトだけで衝撃だった。 誰かに目撃されたぐらいでは、名前を知られるコトはまずない。 だから、情報屋と言えど名前を知ることは難しいのだ。 なのに、アイツは、俺と來羽をフルネームで呼んだ。 何なんだ?冥城雪は? 振り返ると、冥城雪は最初に見たときと同じ、深い笑みを作っていた。 ----- 雪クンついに登場かぁ…。 大分謎キャラになりました。笑 悪戯ちゃんがこれからどう続けるのか楽しみです。(*´艸`) 05/9/25 WrittenBy 水無月 |