來羽が曲り角で誰かにぶつかられた。

相手がものすごい勢いでぶつかってきたのか、よろめいて一歩下がる。


そんな細い体してたら、そりゃよろめくよ。

いや、こんなん言ったら殺されるけどね。

でもやっぱり、米は食べたほうが良いんだよ、來羽。

今の、俺だったら絶対よろめかないでピタッと止まれたもん。

だって俺米食べてるから。


そんなことを考えて、來羽を笑ってやろうかと思う。

その前に、來羽にぶつかってきた勇気ある奴も見ておこうと視線を移す。





そこにいたのは、







” 冥城 雪 ”














//SLAUGHER★MENS//14,エゴイズム










「なんで…お前、ココにいんの……」


自分でもビックリする位、声のトーンが下がった。
眉間に皺を寄せて冥城を睨みつける。


「えー、なんでってそんな…お2人サンを探しに来たに決まってますやん♪」

ニッコリと笑って、ゆっくりと近づいてくる。


「俺達はお前に話すことなんかねぇよ。」

そう言った來羽に視線を向けると、こっちもやっぱり目付き最悪。
近づくなと言わんばかりの雰囲気をかもし出してる。


「嫌やなー。そんなツレない事言わんでよ。寂しいやん。」


笑顔を崩さずに徐々に距離を縮める冥城。

そして俺に顔をズイと近づけた。


「ふふ…やぁっぱり綺麗な髪しとるね、蚕クン。」

「―――っ!!」

反射的に体が動いて、目の前の冥城を振り払おうと腕を振り上げる。


「へ?…っぅお……ッッ!!!」


振り落とした腕は冥城にかわされた。


「――っぶな!!アカンって!本気であんなん当たったらヤバいって!!!!」

うわーっ、ビビッたー。と、ワザとらしくリアクションする。


「………」

「……蚕…?」

來羽がどうした、と問うよに蚕の顔を見る。



何だよ…コイツの反射神経……


今、俺は反射的に腕を上げたから、ホントに一瞬の出来事。

なのにコイツは、無駄な動きをせずにスッと身体を引いた。


この世界で生きている人間だ。

反射神経が良かったり運動神経が良いのは、別に珍しい事じゃない。

だいたい、この位避けられないと俺達の世界じゃ生きていけない。


ただ……単純にムカツク。。

イライラしてたまらなくなる。

治まったはずの偏頭痛が、頭の奥から迫ってくるのを感じて息が詰まる。




「…お前、結局何が目的なんだ。」


ふと、少しの沈黙を破ったのは來羽。


「…うーん、せやな……」

來羽の言葉に先ほどとは一転。

真剣な表情に変わった。


「特に深い意味はないねん。ただ君らが気になって気になって……
ものすごく興味があんの。それだけ。せやから、そんな警戒せんといて。」

ね?と首を傾げてまたニッコリと笑う





「オイ、そこの!今、授業中だぞ。何やってるんだ。」


「……っ!」

ふいに後ろから声が掛かる


「うわ、センセーゃんかっ」

その言葉に後ろを振り向く。


最悪なことにそこには生徒指導部のうっさい先公。

來羽の方からも軽く舌打ちが聞こえた。


「篠崎と……戸塚か…2人で何してるんだ。」

「は…?」

2人という言葉に眉を顰める。

また、後ろに振りかえるとそこにはもう、冥城の姿はなかった。


……逃げ脚早い奴…


「…ちょっと2人とも来い。」

そう言った先公に、いかにも面倒そうな顔をしつつ、
抵抗するのも面倒になって連れていかれたのは生徒指導室。


座れ、と言われパイプ椅子に腰掛ける。

椅子からギシッと音がなったのを合図にしたように、
説教が始まった。



コイツはこの学校で唯一、來羽に注意できる先公。

來羽はこの学校じゃ怖がられてるうえに頭も良いらしいから、
先公は何も言い返せないし、文句も言えない。

だから、來羽の近くにいれば必然的に俺も怒られなくてすんだのに…

コイツだけは誤魔化せない。

ゴチャゴチャとウルサイ。

長々と自分の意見を述べて、俺達生徒には有無を言わせない。


………ウザ


ただでさえ、冥城の意味のわからない行動にイライラしているのに。

ここで俺がコイツに腕を振り上げたら、來羽はどうするだろう。

止めるかな。

それとも、加わる?いや、それはないな。

じゃァ……笑って見てる………?


なんか、想像できちゃうな。最後のやつ。

てか、殴ったら俺、停学だしょ。もしくは退学だよ。

多分、他にも悪い事してるから、それ加算して後者だね。


先公の長ったらしい説教を適当に聞き流して、そんな事を考える。




「わかったら、もう行け。授業はちゃんと出るように。」


まったく面倒な奴等だ、と溜息をついた先公を無視して、すぐに生徒指導室をでた。





「ゔーあ゙ー……らいはー…授業出んの?」

「……出る気分じゃねぇ」

「だーよねぇ。あーもー…ウザー。何がウザイって、なんかもう全て?」


もしホントにカミサマがいるんだったら、俺のこと大嫌いなんだよ、きっと。

まァ、それなりに嫌われる要素はたくさんあるけどさ。

俺に不幸を与えすぎじゃない?

俺の事そんなに嫌い?バーカバーカ。(あ、これで更に嫌われたかも)


なんて、少々現実逃避している自分に溜息


てか、俺等何処向ってんの?

この道のりだと屋上かな。


「…冥城のヤツ何処行きやがった。」

「探すの?」

「んな面倒なことしない。」

「でしょーね。」

「でも見つけたら一発殴る。」

ていうか、勢い余って殺しちゃいそうだよ來羽きゅん。

俺は大賛成だけどね!

來羽もカミサマに嫌われてそうだ。


「てか、もう殺しちゃわない?おれ我慢の限界なんだけ…どっ」

屋上の扉を開ける。

風が強いのか、少し重い。


扉を開けると風がブワっと入ってきて、目が少し痛かった。



「殺すのはまだ早い。」

「は?なんで。」

塀に寄りかかる來羽の隣に腰を下ろす。


「アイツがどんな奴かが正確にわかってる訳じゃない。いま喧嘩ふっかけても危険なだけだ。」

「危険なんていつものことじゃん。」

「いつもと一緒にすんじゃねぇ。俺等の名前つきとめたくらいなんだ。少なくとも頭は悪くない。」

「……」


頭は悪くない。

うん。まァ、そうなのかもしれないけどさ……

俺、ホントそんなに我慢強くないよ?

次、顔見たら來羽が殴る前に殺しちゃうよ?



不満を表情に出して、來羽を見る。


視線に気付いたのか一瞬目が合って、面倒くさそうに口を開いた。


「……俺等が殺そうとしてるって事ぐらい気付いてる。
  ああいうタイプは、簡単には殺されてくれねぇよ。」


「………」





正直、來羽の言いたいことは痛いほどわかってる。



きっと奴は死なない方法を知っている

この世界で生き残る為の術を、頭のなかに叩き込んでいるはずだ



なんで言い切れるのか


簡単な事だ







アイツはきっと、俺達と同類









表ではいつも俺のように愛想良く振舞って、人間関係を要領よく築いていくんだろう

そして、頭の中ではいかに自分に意味のあるものなのかを判断していく

不必要であれば簡単に切り捨てる



他人はどうなろうと、ようは自分が有利な方に物事が動いていけばいい



この世界はエゴイストの塊だ


誰もが、ありもしないエゴを保っていこうとする


精神の崩壊は間近













現実を垣間見た気がして頭が痛くなった。



空を見上げれば曇り空。


なんだか、俺みたいだ。

















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えー…果てしなくお久し振りでございます。

悪戯です。


今回は蚕視点で展開してみました。

センチメンタル…?

ていうか、今回文字数多いな。

ていうか、時間掛かかったな。

約2週間…くらい?

久々すぎて感覚が…ね。うん。

続きたのみますよ、水無月たん。(たん?)





06/07/18

WrittenBy 悪戯