やっぱ、來羽が居てくれると、面白い。











潰れて、そろそろグチャグチャになってるそれを包むビニール袋さえも、

破けてしまうのは時間の問題かもしれない。




けど、楽しくて、

こんなグチャグチャにしてしまった、もう一人の犯人の後姿を見て、

俺は笑った。





今まででは満足できなくなった。

俺の周りって偽りだらけで、

ただ真実があるとするならば、それは俺の好きな"殺す"という行為と、

俺のその姿を知っている"戸塚來羽"という人間だけだから。



つまらない。




というか、疲れる?




ま、そんなんどーでも良いんだけど。

表側の人間とは、たぶん、そのうち自然に縁が切れてしまう気がするから。




今日の來羽と俺の様子を見てて、

たぶん、奴らは、

俺をちょっと違う世界の人間だと認識できたんじゃない?

カルチャーショックみたいな、衝撃。



驚いてるのを見るのが楽しかった。















俺 、 君 達 ト 違 ウ ン ダ ヨ ?





















//SLAUGHER★MENS//7,違和感

















暑い日差しが降り注ぐ。

來羽に借りた、赤いシャツが汗で濡れて、肌に張り付いてくる。

あぁ、気持ち悪い。

早くシャワーを浴びてスッキリしたい。



來羽早く来てくれないかな…。

俺が真っ黒になっちゃうよ。

んで、干からびちゃう。

ヤマンバとかの時代は過ぎ去ってるし、

干からびるのも真っ平ゴメンなんだけどな。






「あ、らーいはー!」






來羽が此方に歩いてくるのが見えた。

普通に歩いてる、けど、やや早足?

いや、來羽の場合は元々歩くのが早いだけか。



俺はポケットからキーを取り出す。

差し込んで、エンジンをふかす。






「で、どっちから行くんだ?」


「うーん…。俺んちかなぁ。荷物多いのヤダし、食べもん痛んじゃうでしょ。」






バイクに乗り込む。

さぁ、行こうか?

























「小さいな。家もお前に似てる。」


「いやいやいや。君んちが大きいだけなの。それに、家もお前に似てるとか!ヒドイ!」





笑ってるけど、

正直、帰りたかったキモチと、帰りたくなかったキモチが入り乱れる。

弟には、まぁメールもしてるから今日帰ってくるの知ってるし。

けど、母親には一切の連絡を入れていない。

というか、あの人は俺に興味がないと思う。



何だろう。

俺と弟の何が違うんだろ。

一緒なのにね。

ちゃんと血もつながってるし。






「入らねぇのか?」


「あ、うん。入るよ。」







ガチャという音と同時に、ドアが開く。







「ただいま。」







大きくはない、けれど、小さくはない音量で。

ワンテンポ遅れて、來羽の「お邪魔します」という声が響く。



返事は返って来ない。

普通だったらお帰り、とかいらっしゃい、とかの声があるのかもしれない。

けど、それはもうこの家では何年も繰り返されていない。

いや、弟と母さんの間ではあるのかもしれないけど。

俺は極力この家にいることを避けるから。



たぶん、あの人はリビングにいると思う。

けど、声をかける気はさらさらないから。

リビングのドアを通り過ぎて、階段を上がっていく。

二階には、俺と弟の部屋と親というには抵抗のある二人の部屋がある。

今ではもう、母さんが一人で使っているけれど。





「翔ー。」





階段を上がって最初に見えるドアの前で立ち止まって声をかける。

ガチャリと、自然にドアが開いた。

そして俺より頭半分ぐらい小さいヤツが出てくる。




「あ、兄ちゃん。帰って来たんだ。」


「うん。今さっきね。荷物取りに来た。」





ふと、翔の視線が來羽に向いた。

來羽もそれに気付いたみたいだった。





「こんにちは。篠崎翔です。」






そう言って翔が笑った。







「兄ちゃんの友達だよね?」


「…まぁ、そんなモンかな?」






友達という言葉に何か違和感があった。

俺と來羽は、"友達"なの?

いや、それ以上な気がする。



けど、それが何なのかはわからない。言葉が自然と濁ってしまったのもそれだし、

來羽が返事を返さなかったのもそれだと思う。








「荷物取り来たってコトはまた誰かの家に泊まるの?」


「うん。來羽…あ、この人の家に。戸塚來羽クンね。」


「そっか。兄ちゃん戸塚さんに迷惑かけちゃだめだよ。すぐ何か騒ぐんだから。」


「うっさいな。わーかってるって!…じゃぁ、荷物まとめるから。」


「うん。」







そのあと一言、「兄をお願いしますね。」と來羽に言って、翔はドアを閉めた。







「………お前らちゃんと血が繋がってんのか?」


「失礼な!ちゃんと血を分けた兄弟ですよ!」


「どっちが兄かわかんねぇな。」


「ひーどーいー…」










階段を上がって最初のドアが翔の部屋。

で、その左隣が俺の部屋。

右の奥があの人達の部屋。



滅多に右方面にはいかないよな。なんて思う。











自分の部屋のドアを開ける。

なんだか、久しぶりだねマイルーム。







「お前のタバコの臭いがする。」


「あぁ。ここで普段吸ってるからね。さて。服を出さなきゃ。」


「殺す時に使うものも忘れんなよ。」


「大丈夫。そこらへんはぬかりないよ〜。」






荷物をまとめて、部屋を一通り見回す。






「終わったか?」


「うん。コレでもう大丈夫だと思う。」


「そうか。…そーいえば、お前の弟って何歳だ?」


「中二だってば。前にも言わなかった?」


「……アレで中二。」


「うん。」


「蚕。」


「んー??」









「犬に会わせろ。」











「………………………ぷッ!!あははははははっ!!って、イッタ!」


「笑ってんじゃねぇ。」


「いったいなぁ!殴らないでよ…これ以上馬鹿になったら困るでしょ!」


「それ以上馬鹿にはならねぇから安心しろ。」


「ヒドイ…まるで俺が馬鹿の最高傑作みたいな…」


「よくわかってんじゃねぇか。とりあえず、早くしろよ。」


「しょーがないな…じゃぁ、庭来て。」


「おう。」













ノリ気な來羽に思わずまたふきだしてしまった。

案の定、また殴られたけど。



あ、そうだ。



お風呂のガァ子ちゃん取りに行かなくちゃネ。





























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7発目ー。水無月です。

今回はカナリ早く書けたね。何というか、頑張った。

蚕の弟の翔くん、何気にお気に入りです。笑







05/08/16