小さな家



とは思ったが、


それは自分の家と比較した場合であって

周りの住宅と比べてみれば、特別小さいわけじゃない


そこには、蚕の弟と母親

蚕が階段を上がっていくとき、

少しだけリビングが見えて、母親と目が合った


あまり好きなタイプじゃない

女性の好みどうこう、ではなくて

一人の人間として。

人のことを言えたものではないが、

あの目は、どうしようもなく気に入らなかった




その後、蚕の弟 翔

アイツと同じ血が流れているとは思えないほど落ち着いていた

それとも、兄があれだから、そうなったのかは俺の知った事じゃない



ああ、そういえば犬もいた

やはり、というか思ったとおりというか、


主人に似すぎた


人のことを視界にいれた瞬間、飛びついてきた

それを見た蚕は爆笑するし、

さりげなく、二階の窓から見ていた弟の方もクスクスと笑っていた

あァ、コイツ等が育ててりゃ、こうなるか。とあっさり納得したんだ















//SLAUGHER★MENS//8,真意と深意

















犬もひと通り観察して、買出しに行く事にした


蚕の背中には衣服など、必要最低限のものが入った、リュック

始めは少し多いんじゃないかってくらい、多少大きかったバッグだったのを俺が止めた

二人乗りで帰るうえに、買出しするというのにそんなに大きな荷物は、

後ろに乗る俺がとてつもなく迷惑だったので、足りなかったら買ってやると言ってその場を凌いだ




夕焼けの空が少し眩しい時間

バイクを家近くのデパートにとめる



「で?何買うんだ。」


隣でカゴだの、カートだのを入り口で引っ張り出している蚕に視線を動かす


こんなデパートに若い男2人で買い物なんて、それだけでもおかしいモノなのに



・・・・・なんで、こんなに似合ってるんだコイツは



「えー?とりあえず米。米ないとか、困るよー。いっきにレパートリー減るんだよね。」

「・・・・そんなに、好きじゃない。」

「うわー。いま、日本人として言っちゃいけないこと言ったよ。」

「・・・・せめて麺。パスタ。」

「麺とかパスタとか米じゃ、けっこう違うんですけど。」

「知らん。」

「無責任な事言わないの。」


米は少し食べたら、すぐいっぱいになってしまうし、だいたい味がない

おかずと食べろとは言うが、そんなバラバラ食えるほどの胃袋も持ち合わせていない

それを蚕に言ったら、じゃぁ、少なめで良いやといいながら、食料を選んでいく




ふと、目がとまったのはパイナップルジュース

そういえば、クルエボでいろいろ試したいカクテルがあったので買うことにした



「・・・・・・あっち行ってくる。」

「え?なに、ジュース飲みたいの?」

「違げぇよ。カクテルに使う。」

「ナルホドね。いってらっしゃーい。あ、コレいるかなー・・」


ブツブツと一人で食材を選ぶ蚕から遠ざかる









「パイナップルジュースに、グリーンバナナ、ライムジュース...」


それらを手に持って、何度か確認

確かマンゴスティーナもパイナップリ―ナも家にあった




あとから思ったが、これでかなり荷物が増えた事に気がつく

少しばかり後悔

まぁ、歩きじゃないのだから平気だろうと勝手に判断




「ん。」

蚕のカートに全て突っ込む

「うわー・・・荷物増えた。米だけでもツラいのに。。」

「だから、米いらねぇっつってんだろ。」

「ほら、またそうやってー・・・良いや、お会計行こう。」

「金は。」

「もち、來羽サマ持ちで。」

「都合のいい奴だな。」

「当たり前っしょ。」


会計を待つのがタルかったので、財布ごと蚕に渡しておく

そのあと、てきとうに袋に詰めてまたバイクへ戻る



「米あわせて袋3つか。。うーん・・・ま、これだけ買って3つで済めば良いほうかな。」

「かったりぃ。。」

「ほら!そう言わないで袋持つ!!スピードださないから!!」

「・・・はぁ」

「盛大なタメ息つかなーい!!!」

「うっせぇ。早く行け。」

「もおー。」


大きくエンジン音をならしてデパートをでる


折角スピードのないバイクに乗っているのに、両手には袋

煙草も吸えやしない









「・・・・・・・・・・・・あ」

「え、なになに。なんか落とした?」

「いや、違う。」

「なんなのさー」



そういえば家にコアントローがないことを思い出した

カクテルに使うリキュールのこと


もう、買いに行くのは面倒だ

明日、マスターのところへ行って一本もらおうか




「明日は、自分のバイクで行く。」

「なんかあんの?」

「ちょっと寄る。」


行き先も、理由もほとんど告げない



というより、別に告げる必要がない


多分、コイツも必要ないと思っているだろう


お互いを心配するような関係じゃないから、

当たり前といえば、当たり前だ




「ふーん。んじゃ、俺も明日は一暴れすっかなー。」

「深夜3時以降に帰ってきても鍵あけねぇからな。」

「・・・・お母さんみたいな事言うね。」


「・・・・・深夜3時以降なんていう親いねぇだろ。」

「あは、確かに。お、着いたよー。ちゃちゃっと部屋行こうー!」

「おいコラ、荷物もて。米っ」

「えぇー?運転して疲れた!」

チャキッという音と共に銃口を向ける

「・・・・・・はーい。」

「毎回毎回、これやらせるんじゃねェ。本気で撃つぞ。」

「うわ、冗談。勘弁してよ。」


荷物を持って、上の方の階にある俺の家を目指す






そういえば、今日

蚕の弟に言われた事を思い出す






「兄ちゃんの友達だよね?」






そう言われたとき、

蚕が言葉を濁らせて、少し誤魔化しているのが、

なぜかとても面白かった





友達



すくなくとも、俺たちの間柄で使う名称ではないだろう


じゃぁ、俺たちの 間柄 ってなんだ




この状態は傍から見たら、やはり " 友達 " というものになるんだろうか




でも、

いざとなったら俺は、蚕に向けて引き金を引くことができる

迷いも、躊躇もなく




そして、コイツも

俺を殺す事に抵抗はないはず



これを " 友達 " と呼べるのか...?

いや、それはないだろう


友達 という関係であるなら、

殺す事に対して、一瞬、躊躇いを持つ

本当の友達と呼べるものなら、殺すという行為でさえ、しないだろう







俺たちが、 " 友達 " ではない事実








「なんかさー・・・・新婚さんみたいじゃね?お使い帰りの。」

「早死に希望か?」

「イエイエ、ソンナ。ジョーダンデスヨ。ハハハ。」

「・・・しいて言うならアレだろう、」

「アレって何。」


「犬と飼い主。散歩帰りの。」









「んだよ。」

「今ね、おもいきり噴出しそうだったんだ・・・」

「ほお・・・。」

「でも、よく考えたら、ソレって俺がペットレベルっていうね・・・・」

「充分だろ。」

「でもほら!そしたら、俺の面倒ちゃんと見ないとさ!」

「バカ、そしたら意味ねぇんだよ。捨てる。」

「え、さっそく捨てんの?!」


「俺は世話のいらねぇペット以外はお断りだ。」


「・・・そんな犬、この世にいないよー。」

「期待してるぜ。」

「うわー・・頑張ります。」















まぁ、けっきょく俺にとってはどちらでも良いこと


知ったところで、何をするわけでもない







真意を解明することもせず

深意を探ることもしない





それが、俺たちの " 間柄 "




























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8発目、お買い物編終了。 悪戯でした。


來羽は米が苦手な事が判明。(雰囲気でそんな感じが。。)

蚕はとってもいい奥さんになりそうですね。笑
買い物上手って感じ。








05/8/17

WrittenBy 悪戯